Internet Vision Meeting(iVM)のお知らせ


過去の開催記録    2009&2010年度(1-11回) 2011年度(12-22) 2012年度(23-31) 2013年度(32-41) 2014年度(42-50) 2015年度(51-60)


2016年度開催

第70回:2017年3月16日()18:00〜19:30

水科晴樹(徳島大学大学院理工学研究部)

立体映像に対する感受性と視機能の相関

立体映像が一般になかなか普及しない原因のひとつに,視聴によって生じる疲労や不快感が挙げられる.しかし,これらの感受性には大きな個人差がある.本研究では,この個人差の原因が,視機能の個人差に起因するのではないかと考え,立体映像の感受性と,個人の視機能との相関を調べた.視機能として,瞳孔間距離,視力(5m遠視力,30cm近視力),斜位(5m,30cm),輻輳融合限界に着目した.立体映像の感受性の指標として,交差視差および非交差視差の視標に対して,輻輳を伴う両眼融合時に,快適に観視できる最大の視差の範囲を「快適視差範囲」として,各被験者に対して測定した.被験者は,正常に両眼立体視ができる20代前半の37名(男性18名,女性19名)であった.その結果,視力,左右眼の視力差,外斜位,輻輳融合限界と,快適視差範囲との間に有意な相関が見られた.また,眼から画面まsでの視距離が100cmの場合は,快適視差範囲は輻輳側(画面から飛び出す方向)に広いことが明らかになった.

第69回:2017年2月16日()18:00〜19:30

大塚聡子(埼玉工業大学心理学科)

表情の順向・逆向順応と個人間転移

表情認知において順応効果が生起することが知られており、この効果は順応刺激とテスト刺激の間で人物が異なっていても生起する(順応の個人間転移)。本研究では、テスト刺激の直前に順応刺激に接触する場合(順向順応)に加えて、直後に接触する場合(逆向順応)の効果について検討した。実験1で順向順応を確認した。順応刺激として幸福・嫌悪・真顔画像、テスト刺激として真顔画像を使用し、順応刺激とテスト刺激の関係を同一人物・別人(同性)・別人(異性)の3種類に設定した。実験参加者にはテスト刺激の表情がポジティブかネガティブかの強制判断を求めた。その結果、順応の個人間転移は幸福顔において認められた。実験2では逆向順応を検討した。その結果、参加者の反応は順応刺激に同化する方向に偏り、個人間転移の有意傾向が認められた。実験3では順向・逆向効果の加算効果を検討した。その結果、順応は順向効果と同方向に生じ、個人間転移は嫌悪顔において認められた。これらの実験より、順向効果と逆向効果は質的に異なり、前者の効果の方が優勢であることが示唆された。表情順応の個人間転移は頑健な効果であると考えられる。

第68回:2017年1月26日()18:00〜19:30

上地 泰一郎(千葉大学大学院人文社会科学研究科)

配置領域の拡大によって要素は縮小して知覚される

 正円の要素刺激を円周上に配置したものを観察した際,要素刺激間の距離が大きくなったときに要素刺激が縮小して知覚される錯視現象を発見した.この錯視は,要素間の大きさの対比によって生じるエビングハウス錯視と形状が似ている.ただし,錯視によって見かけの大きさが変動する円刺激は中央部にはなく,周辺に配置された要素刺激の大きさは物理的に変化することは無い.本研究では,この新しい錯視に関して,エビンウハウス錯視と同様に対比で説明できるか,要素刺激の個数やその配置の占める領域の大きさによってどのような影響を受けるか検討した.実験1では,要素刺激の見かけの大きさに配置の占める領域の大きさがどのように影響するのか検討した.領域の拡大に対応して,要素刺激が縮小して知覚されることが示された.実験2では,要素刺激の個数を操作し,配置の占める領域の形状や大きさが要素刺激の見かけの大きさにどのような影響を与えるのか調べた.全ての要素刺激の個数条件で,領域の拡大に対応して要素刺激が縮小して知覚されることが示された.個数が2つの条件で要素刺激が縮小して知覚されたため,要素刺激が形成する内部領域と要素刺激の間の大きさの対比効果によって錯視が生じたとは考え難い.また,見かけの大きさの変化が縮小方向のみの錯視であるため,要素刺激の見かけの大きさの拡大と縮小の両方を引き起こすエビングハウス錯視とは異なる錯視と考えられる.

第67回:2016年12月15日()18:00〜19:30

眞田尚久(生理学研究所・感覚認知情報研究部門,総合研究大学院大学)

大脳皮質V4野における色情報の空間的統合

 私たちは物体がどのような色であるか瞬時に識別することができる。しかし、同じ物体であっても色の見え方は照明環境や物体周辺の視覚情報によって影響を受けることから、色知覚は物体とその周辺を含めた色情報が視野空間上で統合された結果だと捉えることができる。
 これまでの色情報処理の生理学研究では、単色の色刺激に対する神経活動を調べる研究が主にされてきた。この方法では、神経細胞の色に対する基本的特性を調べることはできるが、色情報の統合の神経基盤を理解したとは言えない。そこで本研究では、2色の組み合わせに対するV4野神経細胞の応答特性を調べることで、色情報の空間的統合の生理学的基盤を明らかにすることを目的とした。
 サルV4野の単一神経細胞から細胞外電位記録を行い、2色を同心円状に組み合わせた色刺激を受容野内に呈示し応答特性を計測した。これらの2色には等輝度、等彩度の色相を均等にサンプルした8色を用い、64の色の組み合わせ刺激を提示した。
 その結果、記録されたV4野神経細胞の約40%が中心と周辺の色が同一である場合よりも、ある特定の色の組合せに対してより強い応答を示すことが分かった。また、その2色の配置を中心と周辺とで入れ替えると反応が著しく減弱することから、色の組み合わせに対する応答には空間的な特性があることが示唆される。これらのことから、V4野において色情報が空間的に統合されていると考えられる。

第66回:2016年11月17日()18:00〜19:30

小林勇輝(大阪大学大学院人間科学研究科)

グレア錯視図形における彩度の効果

Zavagno (1999)は,グレア効果(glare effect)と呼ばれる視覚効果を報告している。これは,ある領域の周囲に,その領域に向けて上昇する輝度の勾配を付与したとき,その領域が光を発しているように知覚されたり,輝度が上昇して知覚されたりする現象である。本研究では,グレア効果における輝度のグラデーションを彩度のグラデーションに置き換えたときに起きる錯視効果について調べた。中心に向けて彩度が上昇する刺激を用いて,恒常法に基づく実験を行ったところ,彩度のグラデーションに囲われた領域はそうでない領域よりも彩度が高まって知覚されることが確認された。また,輝度のグレア効果においては,その中央領域において輝度の対比効果が強化されることが確認されている (Agostini & Galmonte, 2002)。この現象においても同様に,彩度のグラデーションによって彩度の対比効果が強化されるかどうかを調べたところ,輝度のグラデーション同様,彩度の対比効果強化が起きることが明らかになった。輝度のグラデーションに比べ,彩度のグラデーションは自然界において一般的でないことを踏まえると,この錯視現象はどのように獲得されてきたものであるのか,深い議論が必要となる。

第65回:2016年10月20日()18:00〜19:30

小澤勇太(北九州市立大学大学院 国際環境工学研究科)

大きな奥行きの知覚における両眼網膜像差,運動視差,相対大きさ手がかりの相互作用

[背景と目的] 両眼網膜像差や運動視差は比較的小さい奥行きの知覚において有効であると考えられている.ここでは,大きな奥行きの知覚における 両眼網膜像差,運動視差,相対大きさ手がかりの相互作用について検討した.[実験方法] これらの手がかりによって知覚される奥行きをマッチング法により 測定した.テスト刺激として,80個のガウシアンブロッブを仮想的な3次元空 間内にランダムに配置した.[実験結果] 両眼網膜像差,運動視差,相対大きさ 手がかりを単独で与えた場合に大きな奥行きが知覚されることはなかった.両眼 網膜像差と運動視差を同時に与えた場合も同様であった.しかし,両眼網膜像差 と相対大きさ手がかり,もしくは運動視差と相対大きさ手がかりを同時に与えた場合には比較的大きな奥行きが知覚された.[結論] これらの実験結果は,両眼網膜像差および運動視差が大きな奥行きの知覚に寄与すること,また,そのためには相対大きさ手がかりなどの絵画的な手がかりと矛盾しないことが重要であることを示唆している.

第64回:2016年9月29日(木)18:00〜19:30 野崎裕嗣(鹿児島大学大学院理工学研究科)
共同研究者:木原健(鹿児島大学)、Hiroshi Ono(York University)、下野孝一(東京海洋大学)、 大塚作一(鹿児島大学)
視覚的注意が中心視刺激の両眼融合に与える影響-注意の瞬き課題を用いた場合-

人間が両眼の網膜像を融合して単一視できる差異の限界は,刺激の大きさや輝度などさまざまな要因で変化する.本研究では,二つの標的を含む刺激群を中心視野に高速逐次呈示する注意の瞬き課題を用いて,視覚的注意が両眼融合に与える影響を調査した.第一標的(T1)は矢印,第二標的(T2)は線分とした.実験1では,T2に視差を付与し,単一に見えるか二重に見えるかを測定した.その結果,T1とT2の呈示時間間隔(SOA)が100msのときに単一視の知覚頻度が増加した.実験2では,実験1に加えてT2に各眼異なる色(赤,緑)を付与し,T2の知覚された色を測定した.融合による単一視が起きた場合黄色が,抑制による単一視が起きた場合赤もしくは緑が知覚されることが予想される.実験の結果,SOAが100msのときに黄色単一像の知覚頻度が増加した.注意の瞬き課題では,SOAが100msのときT2への視覚的注意が増強されるという報告がある.以上より,視野中心の対象への注意の増強は両眼像の融合を促進することが示唆される.

第63回:2016年7月20日(水)17:00〜18:30 長潔容江(九州大学大学院人間環境学府)
名画と駄作に対する潜在的な美的評価-IATおよびSD法による検討-

名画と呼ばれ,長い間人々から親しまれている絵画がある。絵画作品の評価を調べる研究では,SD法によって顕在的に美的な評価を問う方法がよく用いられるが,この方法では人々が純粋にそれらの作品を好んでいるのか,それとも有名な画家が描いた作品だから高く評価しているのかを区別することは難しい。そこで,本研究では,潜在的にも名画は好まれるかを検討した。絵画刺激には,有名な画家による有名な作品(名画),そして駄作美術館の所蔵作品(駄作)を使用した。潜在的な美的評価はImplicit Association Test(IAT)を用いて測定し,顕在的な美的評価はSD法による尺度を用いて測定した。実験の結果,顕在的な評価については名画の方が駄作に比べて高く評価されたものの,潜在的な評価については名画および駄作の間に違いは見られなかった。つまり,名画に対する潜在的な選好性は示されなかった。

第62回:2016年6月16日(木)18:00〜19:30 Dr. Chia-huei Tseng(Visiting assistant professor, Department of Psychology, National Taiwan University)
Both visible and invisible regularity determine where we look at

Attention reduces our processing load by directing us to the most informative stimulus parameters (e.g. feature, location, time), and a complete understanding of how attention works has both theoretical and application values. In this seminar, I will talk about my work centered around two questions: how our visual attention interplay with scene regularity (e.g. color, collinearity, orientation) and guide our search behavior? Is it possible that a feature, without being detected by our perceptual awareness, direct our attentional focus? At the end, I will also discuss about the implications from these research results on design and understanding of attentional systems.

第61回:2016年5月26日(木)18:00〜19:30 宮本カイ(東北大学大学院情報科学研究科)
警告音による探索時の行動変化に関する研究

視覚課題において学習が起こることの報告は多く挙げられており、また、フィードバックを与えた際に学習効果が変調されるという報告も存在する。本研究においては、特定の動作に関連付けて負のフィードバックを与えることで、その関係を学習し行動が変化するかどうかを検証した。実験1では、視覚探索課題遂行中に頭部が同一方向を向き続けている際に警告音を呈示し、その後ペナルティとして当該試行を強制的に打ち切る、という条件で被験者の頭部運動を測定した。その結果、警告音の鳴動後に被験者の頭部運動が促進されることが分かった。実験2では被験者の頭部運動と関係なくランダムに試行を打ち切る条件で実験を行った。この条件では被験者の頭部運動に変化は見られなかった。これらの結果から、行動に関連付けたフィードバックを与えることにより、それらの関係が学習され、被験者の行動が変化することが示唆される。


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