Internet Vision Meeting(iVM) 2014年度開催記録


過去の開催記録    2009&2010年度(1-11) 2011年度(12-22) 2012年度(23-31) 2013年度(32-41)


2014年度開催

第50回:2015年3月5日(木)18:00〜19:30 大塚聡子(埼玉工業大学心理学科)
水平方向と奥行き方向におけるサイモン効果の時間特性とその比較

サイモン効果とは、空間的な刺激-反応適合性効果に関連する現象である。具体的な例では、右(左)側に提示された視覚刺激に対して同側の右(左)手で反応する場合に、反対側の左(右)手で反応する場合よりも反応が早くなる。本研究は、色弁別反応を含むサイモン課題において、課題に関連する色情報の出現と、課題に関連しない位置情報の出現の時間差を操作し、サイモン効果における時間特性を調べることを目的とした。また、水平方向と奥行き方向の間で時間特性を比べることも目的とした。実験1では水平方向における効果を検討した。被験者は、赤または緑の色パッチの色に応じて左右のボタンを押す課題を求められた。凝視点に対する刺激の出現方向と反応手が同じ方向である場合を適合条件、逆である場合を非適合条件とした。色と位置の出現時間差SOAを0, ±100, ±200, ±300msの7水準に設定した。実験の結果、サイモン効果はSOA0~+200msの場合に生起した。このSOA区間では全体的な反応時間も増大した。実験2では両眼立体視による奥行き方向における効果を検討した。刺激の視差量は交差・非交差視差で5.2’だった。サイモン効果はSOA 0〜+100msの場合に生起し、水平方向の場合に比べると効果量は小さかった。全体的な反応時間が増大する傾向は明瞭ではなかった。これらの結果をサイモン効果の発生機構と注意機能の観点から議論する。

第49回:2015年1月29日(木)18:00〜19:30 村越琢磨(千葉大学・文学部)
運動制御課題中の境界拡張

呈示された画像を想起する際に,実際に呈示された画像領域よりも広範な領域を知覚したと想起する現象である境界拡張に対して,これまでの先行研究では視覚入力や触覚入力の効果などが調べられてきた.本研究では,運動出力を伴う課題を遂行する際に,この境界拡張が生起するのか,生起するならば,どのような特性を伴うのかを検討した.呈示画像の可視領域を変化させることで画角を操作し,画像のクローズアップ度合いを3段階設けた上で,視覚場面の境界位置について,視覚フィードバックによる再認を行う条件(視覚条件)とポインティングによる再認を行う条件(運動条件)を比較した.その結果,両条件において,境界位置の再認エラーが生じ,境界拡張の生起が確認された.さらに,両条件ともに画像がクローズアップである場合に,拡張割合が最も大きかった.ただし,運動条件では視覚条件に比べて境界が縮小される傾向が示され,これは境界拡張を生じさせる視覚表象が運動制御によって修正を受け,拡張割合が縮小されることを示唆する.

第48回:2014年12月18日(木)18:00〜19:30 西尾亜希子(生理学研究所 感覚認知情報研究部門)
サル下側頭皮質における光沢細胞集団の情報表現

目の前にある物体が、どんな素材で出来ているのか、つるつるしていそうか、みずみずしそうなのか…などといった情報を、我々は視覚情報のみから簡単に識別する事が出来る。このように表面状態の識別をする際、重要な手がかりの一つとなるのは光沢情報である。そこで我々は、光沢情報処理の神経メカニズムを明らかにするために、さまざまな光沢を持つ視覚刺激をコンピュータグラフィクスで作成し、サルが注視課題を行っている際に、それらの視覚刺激に 対する下側頭皮質の単一細胞の反応を調べた。その結果、下側頭皮質に特定の光沢に反応する細胞が存在すること、またそれらの細胞の集団レベルでの活動は、光沢に関わる変数を表現している可能性が高いことなどが分かってきた。今回は、これまでの研究によって得られた光沢情報処理に関する知見を報告する。

第47回:2014年11月27日(木)18:00〜19:30 安岡晶子 (札幌市立大学デザイン学部)
ランダムドット面上における動的変化領域の見かけの奥行き

 RDSで提示する左右眼画像を連続的に継時提示すると、視差を持つ領域が平行に移動して見える。このような刺激図形をランダムドットキネマトグラム(RDK)という。
 運動がみえる領域を中央に含んだRDKを観察すると、動的領域と静的領域は異なる対象として知覚される。両者に図地効果が働くと、RDK内の動的領域は図となり、手前に知覚されやすいと予想される。一方、枠というオクルーダー(遮蔽物)の隙間を通して、運動刺激を観察している見方もある。枠を遮蔽物として堪えると、RDK内の動的領域は奥に知覚されやすいと予想される。
 そこで実験1では、静的領域に対する動的領域の見えの奥行方向を測定した。刺激は、一辺が視角22.3度の正方形をランダムドットで作成し、中央に1辺3.7度の正方形の領域を定める。この中央領域に加える運動成分として、遮蔽の効果が生じにくいドット配置が切り替わるノイズ条件、遮蔽効果が生じやすいドットが上方へ移動する一方向条件と全方向条件を用意した。測定の結果、動的領域の奥行は、ノイズ条件ではHzは高いほど奥に見えた。これは運動検出器が作用するに十分なHzを与えると、奥行の知覚が生じるのではないかと思われる。一方向条件では手前に見え、全方向条件では奥に見えた。
 実験2では、純粋に運動成分のみを含む領域と静的領域との奥行量を検討するため、ノイズ条件10Hzに両眼視差を付加し、静的領域に対する見えの奥行量を測定した。その結果,動的領域が静的領域より奥側に知覚される量は,両眼視差0.5から1分程度であることが示された。

第46回:2014年10月16日(木)18:30〜20:00 原田佑規(九州大学大学院人間環境学府)
凶器の存在は目撃者の有効視野を狭める

犯罪場面における凶器の存在は目撃者の注意をひき,周辺的な情報に関する目撃記憶の精度を低下させる。この現象を凶器注目効果といい,その原因として凶器の存在による有効視野の狭窄が指摘されている。そこで本研究は,凶器の存在が目撃者の有効視野を狭めるか否かを検証した。実験では,凶器を含む写真(凶器条件)か統制情報を含む写真(統制条件)を500ms呈示し,その呈示終了と同時に周辺視野に数字を100ms呈示した。数字の偏心度は1,3,6,9,11度のいずれかであり,参加者の課題はこの数字を同定することであった。分析では,数字の偏心度を独立変数,同定の成否を従属変数としたプロビット分析を行い,それぞれの条件において正答率が50%となる閾値偏心度を求めた。その結果,閾値偏心度は凶器条件のほうが統制条件よりも有意に小さかった。この結果は,凶器の存在が目撃者の有効視野を狭めるという主張を支持する。

第45回:2014年9月4日(木)18:00〜19:30 金成慧(東京工業大学 大学院総合理工学研究科 物理情報システム専攻)
両眼視差による空間構造の変化が明度知覚に与える影響

周囲の空間構造が対象の明度知覚に与える影響についての研究は多く報告されている.しかしながら,それらのほとんどは,空間構造の変化により周囲の輝度の文脈が変化した結果,対象の明度知覚が変化することを示している.そこで本研究では,刺激内の輝度が一様なランダムドットを用い,両眼視差のみで周囲の空間を再現し,その形状変化が知覚的明度に与える影響について検討した.両眼視差で再現された空間に配置されたターゲット刺激に対して知覚される明度を,二次元のランダムドット面上にある比較刺激の明度でマッチングすることで測定した.その結果,空間構造のみから,ターゲットに当たる照明がより弱いと解釈される形状において,知覚的明度が高くなる傾向がみられた.この結果は,対象の近傍にある周囲刺激の輝度による文脈以外にも,両眼視差による空間構造それ自体が明度知覚に影響を与えることを示している.

第44回:2014年7月31日(木)18:00〜19:30 松下戦具(大阪大学人間科学研究科)
輝度勾配を持つ静止画が動いて見える錯視と眼球運動に関するいくつかの特性

輝度勾配を持つパッチを系統的に配置すると,それが静止画であるにも関わらず運動を知覚させる。この種の錯視はサッカードの後に強く観察されるなど,眼球運動との関連が古くから指摘されている。しかし,なぜ眼球運動が錯視を生じさせるのかという詳細なメカニズムに定説はまだない。そのメカニズム解明の手始めとして,我々はまず,輝度勾配の方向と眼球運動の方向に関連性があるかを調べた。実験では輝度勾配の方向とサッカードの方向とを系統的に操作し,その錯視量を測定した。その結果,サッカードの方向と輝度勾配の方向とが直交する場合に比べ,平行する場合に錯視量が小さくなることが示された。次に我々は,残像にも錯視的運動が観察されるかを調べた。実験では,参加者は原刺激を数秒間固視し,続くブランク画面に引き起こされる(継時対比)陰性残像を観察した。その結果,十分な錯視的運動が観察され,必ずしも網膜上の運動は必要ないことが示された(少なくとも残像においては)。これらの知見とともに,輝度勾配を持つ静止画が動いて見える錯視の生起メカニズムが議論される。

第43回:2014年6月19日(木)18:00〜19:30 羽鳥康裕(東北大学電気通信研究所)
空間プーリングとスパース制約による曲率選択性の生成

物体形状の皮質表現は腹側経路の階層構造に沿って生成される.例えば,V1細胞は方位(Hubel & Wiesel, 1968),V4細胞は曲率(Pasupathy & Connor, 2002)に選択的に反応する.しかし,高次領野の選択性を生成する神経メカニズムは明らかにされていない.本研究は,V4の曲率選択性を生成する神経メカニズムを,二種類の計算論モデルにより検討した.第一のモデルは,方位情報を空間プーリングにより統合するモデルである.統合する方位・位置をパラメータとし,すべてのパラメータの組み合わせを用いてシミュレーションを行った.一部の組み合わせは曲率選択性を生成したが,多くの組み合わせは曲率選択性を生成しなかった.この結果から,何らかの制約・学習メカニズムに基づいた統合パターンの制御により,皮質ネットワークは効率的に曲率選択性を生成していることが予想される.先行研究により,自然画像をスパースに符号化する基底関数はV1細胞の受容野特性と一致することが報告されている(Olshausen & Field, 1996).そこで,Olshausen & Fieldにより提案された計算論モデルを用いて,スパース制約がV4の曲率選択性を生成する原理であるかどうかを検討した.V4細胞の受容野に対応する基底を得るために,モデルV2細胞の反応をモデルの入力として用いた.得られた基底はV4細胞の特性(単一細胞レベル,細胞集団レベル)を再現した.これらの結果は,空間プーリングとスパース制約がV4の曲率選択性の生成に重要な役割を果たすことを示唆する.

第42回:2014年6月5日(木)18:00〜19:30 札幌市立大、東北大学、千葉大学
VSS報告会

VSSでの研究発表紹介。

 


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