外界の多くの物は固有のテクスチャを持ち、自然テクスチャ識別は視覚系の重要な機能である。自然テクスチャは高次元の画像特徴であるため、その脳内処理はよく分かっていないが、一方では画像特徴量を元に自然テクスチャを合成するアルゴリズムは成功を収めている。そこで本研究ではPortillaとSimoncelli[1]のテクスチャ合成アルゴリズムで作成した多数の自然テクスチャ画像に対するサルのV4野ニューロンの応答を解析し、このアルゴリズムで用いられる画像特徴量が脳内で表現されているかどうかを調べた。テクスチャ合成アルゴリズムに使う画像特徴量を変換して得た7次元空間上で各ニューロンの応答をマッピングした結果、ニューロン応答はこの7次元空間上のチューニングである程度表すことができた。また神経集団レベルで見るとチューニングのピークはこの空間上に広く分布していた。この結果はV4ニューロンの自然テクスチャ選択性が高次画像特徴量へのチューニングとして説明できる可能性を示唆すると共に、自然テクスチャの識別が視覚系でどのような画像特徴の処理にもとづいて行われるかを理解する手掛かりを与える。
[1] Portilla, J. and Simoncelli, E.P. (2000) Int. J. Comp. Vis. 40:49-71 |