Internet Vision Meeting(iVM) 2013年度開催記録


2013年度開催

第41回:2014年3月13日(木)18:00〜19:30 水科 晴樹(情報通信研究機構 ユニバーサルコミュニケーション研究所)
立体像の快適視差範囲と視機能の個人差との関係

立体映像の飛び出しに対する疲労や不快感の感じ方は個人差が大きいが,その原因はよく分かっていない.本研究では,この個人差を説明するための二つの仮説を検証する実験を行った.一つめの仮説は,調節・輻輳制御系のクロスリンクの個人差に着目したものである.調節性輻輳(Accommodative Convergence: AC)や輻輳性調節(Convergence Accommodation: CA)が,立体像に対しては両眼網膜像の融合やピント合わせを妨げる方向に働くため,ACおよびCAの寄与が小さい人ほど飛び出しに対する許容範囲が広い,という仮説である.もう一つは,実物体に対する調節応答が自然でストレスのないものと考えると,実物体と立体像に対して同じような調節応答をする人ほど飛び出しに対する許容範囲が広い,という仮説である.この二つの仮説を検証するために,各被験者が快適に立体像を見ることができる視差範囲(快適視差範囲)と視機能の測定を行い,両者に相関があるかどうか検討した.その結果,二つの仮説はいずれも否定されたが,調節性輻輳/調節比(AC/A)が1に近い人ほど快適視差範囲が狭い,すなわち立体像の飛び出しに対する許容範囲が狭いことがわかった.AC/A=1が,調節刺激と輻輳刺激が常に一致する実物体を見る状況に最適化された状態であると考えれば,そこから逸脱した状況(AC/A=1からの差が大きい)に普段からさらされている人は,立体像に対しても許容度が大きいと推測される.

第40回:2014年2月27日(木)18:00〜19:30 相田 紗織(東京海洋大学大学院)
多重立体透明視面の見かけの奥行きについて

本研究では、人間の3次元奥行き知覚(3D知覚)について研究を行った。従来のs3D知覚における見かけの奥行き量を調べた研究では、見かけの奥行き量は、両眼視差、観察距離などで表現される幾何学的関係式と比較的よく一致することが知られている。しかしながら、相田・下野(2010)は立体透明視刺激を使うと幾何学的関係式と一致しない現象が生じることを見出した。この現象は、同じ両眼視差をもつ2つの面が重なった2面刺激と3つの面が重なった3面刺激を比較すると、3面刺激の見かけの奥行き量が小さく知覚されるという現象であった(奥行き減少現象)。実験1と2では異なる方法(奥行き再生法と奥行き恒常法)で奥行き減少現象が観察されるかどうかを調べた。現象に重要な要因を調べるために、実験3ではドット密度の効果を、実験4と5では立体透明視刺激の面の数の効果を測定した。実験の結果、立体透明視刺激では奥行き減少現象が起こること、現象は面の数に影響を受けること、ドット密度に影響を受けないことを示した。さらに相互相関モデルを用いて奥行き減少現象の説明を試みた。

第39回:2014年1月30日(木)18:00〜19:30 齋藤 恭彦(東北学院大学大学院)
前後方向への逆転ベクションの生起要因の検討

奥行と運動方向の異なる 2 面のランダムドットパタンの観察時に、前景刺激と同方向に誘導される錯覚的自己運動知覚を逆転ベクションと呼ぶ(Nakamura & Shimojo, 2000).上下左右方向の誘導刺激を用いた彼らの研究では、その生起要因として、(1)前景刺激が誘発する OKN を抑制する眼球運動情報の誤登録と、(2)背景刺激が誘発するベクションによる身体定位の不安定化の 2 点があげられた.本研究では、逆転ベクションが前後方向においても生起することを確認すると同時に、その場合にも先行研究で主張された 2 つの生起要因が当てはまるか否かを検証した.要因(1)を検証するため、実験 1-1 では一定方向への並進 OKN を引き起こさない拡大縮小刺激を前景に用い、また実験 1-2 では背景に回転刺激を用いて全ての並進 OKN を除去したところ、前景の速度が遅い時に逆転ベクションが生起した.この結果から、眼球運動情報の誤登録は前後方向への逆転ベクション の生起要因ではないと考えられる.要因(2)を検証するため、実験 2-1 では背景刺激の速度を、実験 2-2 では背景刺激のコヒーレンスを変化させ、前景と背景が誘発する自己運動知覚をそれぞれ測定したところ、背景によるベクションが生起した条件で、前景の逆転ベクショ ンが生起した.この結果から、身体定位の不安定化は前後方向への逆転ベクションにおいても生起要因の一つであると考えられる.

第38回:2013年12月19日(木)17:30〜19:00 岡澤剛起(生理学研究所)
サルV4ニューロンの自然テクスチャ選択性を決める画像特徴量

外界の多くの物は固有のテクスチャを持ち、自然テクスチャ識別は視覚系の重要な機能である。自然テクスチャは高次元の画像特徴であるため、その脳内処理はよく分かっていないが、一方では画像特徴量を元に自然テクスチャを合成するアルゴリズムは成功を収めている。そこで本研究ではPortillaとSimoncelli[1]のテクスチャ合成アルゴリズムで作成した多数の自然テクスチャ画像に対するサルのV4野ニューロンの応答を解析し、このアルゴリズムで用いられる画像特徴量が脳内で表現されているかどうかを調べた。テクスチャ合成アルゴリズムに使う画像特徴量を変換して得た7次元空間上で各ニューロンの応答をマッピングした結果、ニューロン応答はこの7次元空間上のチューニングである程度表すことができた。また神経集団レベルで見るとチューニングのピークはこの空間上に広く分布していた。この結果はV4ニューロンの自然テクスチャ選択性が高次画像特徴量へのチューニングとして説明できる可能性を示唆すると共に、自然テクスチャの識別が視覚系でどのような画像特徴の処理にもとづいて行われるかを理解する手掛かりを与える。
[1] Portilla, J. and Simoncelli, E.P. (2000) Int. J. Comp. Vis. 40:49-71

第37回:2013年11月28日(木)18:00〜19:30 大石 紗恵子 (千葉大学大学院 融合科学研究科)
光源色に対する色覚異常者の色名応答特性

我々は日常的に色を分類し,色名を用いて表現している.これは色覚 正常者には容易であっても色覚異常者には困難である場合がある.さらに,色覚 異常者は物体色に比べ光源色の識別が難しく,実験条件によって彼らの色名応答 は大きく変化するとも考えられる.本研究では,赤・緑・青のLEDを混色した光 源を用いて,光源色の輝度や刺激の大きさを変化させることにより,色覚異常者 の色名応答がどのように変化するかをカテゴリーカラーとエレメンタリーカラー の観点から調べた.その結果,色覚異常者は色覚正常者に比べ,輝度が高くなる につれて,また刺激が小さくなるにつれて色を混同する傾向がみられた.また, 同じ分光組成の光でも輝度レベルによって色相が変化するBezold-Brücke現象が 顕著にみられた.したがって,色覚異常者は色名応答の際,色度情報だけでなく, 輝度情報を重要な手掛かりとして用いており,また刺激の大きさにも影響を受け ることが示唆される.

第36回:2013年10月17日(木)18:00〜19:30 佐々木恭志郎 (九州大学)
運動対象の知覚時間は初速によって決定付けられる

減速する対象の呈示時間は,加速対象の呈示時間に比べて,長く知覚されることが知られている。しかしながら,この速度変化による時間の歪みがどのようにして起こるのかについてはまだ明らかになっていない。本研究では,この現象が加速対象−減速対象間の前半の速度の違いによって引き起こされるという仮説を立て,検討を行った。実験では,呈示時間の半分が経過したところで速度が変化する運動対象の知覚時間を測定した。速度変化は5 deg/sおよび15 deg/sで開始して10 deg/sに変化する条件 (それぞれEarly-Slow条件とEarly-Fast条件) と10 deg/sで開始して5 deg/sおよび15 deg/sに変化する条件 (それぞれLate-Slow条件とLate-Fast条件) の4種類であった。実験の結果,Early-Slow条件とEarly-Fast条件間では知覚時間に差が見られ,Early-Fast条件の方が知覚時間は有意に長かった。一方,Late-Slow条件とLate-Fast条件間では知覚時間に差が見られなかった。これら結果は,対象の初頭情報が入力される際に生じる負荷が対象全体の知覚時間を決定付けていることを示唆している。

第35回:2013年9月26日(木)18:00〜19:30 安岡晶子(札幌市立大学)
彩度変化による形態知覚の差異がRDSの奥行知覚に及ぼす効果

ランダムドットステレオグラム(RDS)は、線画ステレオグラムと比較すると、両眼視差の融合範囲が狭いことが報告されている。RDSと線画の差異として、RDSの両眼視差が付加された形態は、立体視によって知覚可能となる点があげられる。そこで、RDS内の視差領域が形態情報を含むことによる立体視への影響を検討した。刺激は、黒背景上に白ドットのRDSを提示した。視差領域にあたる図も白ドットのRDSと、色により区別させたRDSを用いた。今回は、彩度を調節することで、視差領域の形態知覚の程度も変化させ、奥行きの閾値と視差の融合範囲を測定した。その結果、彩度による形態知覚の程度が高いほど、交差視差において、最大融合閾が有意に大きくなった。また非交差視差において、閾値が有意に減少し、単一像の融合閾が有意に大きくなった。ここから、RDS内に形態手がかりを与えることで、立体視の見えに影響することが示唆された。

第34回:2013年7月30日(火)18:00〜19:30 竹島康博(東北大学大学院文学研究科)
視聴覚統合による処理促進と注意機能の大脳半球機能差との関連

視覚刺激に聴覚刺激を同期させて提示した場合,視覚刺激の検出や同定の成績が向上することが報告されている。この視覚表象形成における聴覚刺激による促進効果には,注意機能が関連することが示されている。注意機能には大脳半球機能差が存在することから,本研究では視聴覚統合による促進効果と大脳半球機能差との関連について,dual-stream RSVP 課題を用いて検討を行った。実験の結果,刺激の同定を行った場合には右視野で,刺激の位置把握を行った場合には左視野で聴覚刺激の促進効果が見られた。右視野の注意機能を制御する左半球は言語処理に優れている一方,左視野の注意機能を制御する右半球は空間処理に優れていることから,聴覚刺激は課題処理に優位性を持つ半球機能に影響を与えていることが示唆された。

第33回:2013年6月20日(木)18:00〜19:30 松田勇祐(東京工業大学)
画像要素凝集度が図地知覚に与える影響とその抽出範囲の検討

 人は,ある視覚パターンを見たとき,多くの場合,そのパターンのメインとなる領域(図)を,背景となる領域(地)から分離して知覚する,この図地知覚現象は,人の重要な知覚特性の1つであり,古くから多くの研究がなされている.特に,図地知覚を決定する要因として,領域の大きさ,閉合性等のボトムアップ的な画像要素や,親近性等のトップダウン的な影響などが報告されている.しかし,そのほとんどが定性的な議論で,その影響が定量的に議論された要素はほとんど報告されていない.
 本研究では,「同一要素の凝集度」が,図地知覚に影響を与える要因になり得ると考え,その要因と図地知覚との関係性を定量的に明らかにする事を目的とした.画像要素凝集度とは,特定の画像要素の周りに,どの程度同じ要素が固まっているかを表す指標で,隣接画素相関の概念を用いて求められた.この画像要素凝集度を,今回用いた白と黒の2色からなるランダムドット刺激の全体,もしくは刺激を4分割した各領域に対して適用し,各要素(白と黒)の画像要素凝集度の差を求めた.被験者は,呈示される視覚パターンの中で,どちらの要素もしくは4分割のどの領域が図に見えたか応答した.その結果,画像要素凝集度は図地知覚応答に影響を与えることが示された.また,様々な領域サイズで求めた同一要素の凝集度と図地知覚応答の関係性を分析し,図地知覚に寄与する画像要素凝集度の抽出範囲を推定した.その結果,縦横比が1となるものと約1.8(縦長もしくは横長)となるものの2種類があることが示唆された.

第32回:2013年5月30日(木)18:00〜19:30 札幌市立大、東京海洋大、東北大学
VSS報告会

VSSでの研究発表紹介。

 


E. Kimura HomePage