以下は、論文の書き方に関して説明します。
基本的に「論文の執筆・投稿の手びき」及び配布した「活用法」のプリントに書いてある内容に従うものとする。以下、その他の細かい点や手びきに書いていない点について補足する。
用紙:A4サイズ縦置き横書き。ワードプロセッサによる清書を強く推奨する。
手書きの場合は下に脚注用のスペースのある400字詰めの原稿用紙を使用する。原稿用紙は講座で用意しているので手書きの論文を作成する場合は申し出ること。
ワープロを使用する場合の書式は「執筆・投稿の手びき」および「手びきの活用法」のプリントに指定された通りとする。
ファイルにとじ込むために穴を開けるので、左のマージンを十分にとる。また、上下・右のマージンも適当にとる(1インチ程)。
各ページの適当な場所にページ番号を打つこと。
表紙:A4サイズ縦の横開きのファイル(用紙に穴を開けて綴じるタイプ)を使用する。
卒業・修士・中級各論文の提出予定者には、それぞれ専用のバインダーを心理学教室より提供する。
年度、タイトル、学籍番号、氏名、指導教官名を書いた背表紙ラベルを作成し、ファイルの台紙に貼り付ける。詳しくは表紙・背表紙の作り方(修士論文・卒業論文、中級論文)および見本を参照のこと。
タイトルは指導教官と相談して決めること。副題はつけても良いが、一つまでとする。
指導教官と相談して、他の人が読んで理解できるタイトルにすること。
「手びき」に書かれている構成が唯一のものではない。よりわかりやすい構成があれば、その方が良いことは明白である。
研究論文の構成はその研究の構成によって決まってくる。中心となる問題やテーマがあり、それに基づいて複数の実験や調査を行った場合には、次のような構成になるかもしれない。
・序論
・本論 目的
一般的方法
実験1:目的、結果、考察
実験2:目的、結果、考察
・
・
一般的考察
・結論
また、単一の実験、調査のみから成っている場合には、以下のような構成になるかもしれない。
・序論
・本論:目的、方法、結果、考察
・結論
以上の構成はあくまで標準的なもので、必要に応じて変更してもよい。いずれにしろ、自分の研究を読み手に理解してもらうにはどうすればよいのか、論文の構成の段階からよく考えること。
ここに説明する構成は「序論・本論・結論」となっていて、「手びき」の推奨構成とは異なっているが、各項目に書くべき内容が違うわけではない。適宜自分の研究に合わせた構成を考えたうえで、それぞれに書くべきことを以下の内容からよく吟味すること。
その研究で取り上げたテーマについて、過去の研究を要約しつつ説明する。後述する研究の目的と関連づけられるようにまとめておくこと。序論で記述する内容は次の通り(すべてを含んでいなくてもよい)。
実験的研究の場合は、目的、一般的方法(複数の実験に共通の事柄)、実験1、2、・・・からなる。調査研究の場合は、一般的方法、調査1、2、・・・となる。あるいは、実験、調査の代わりにコンピュータ・シミュレーションといったものになる場合もある。各実験、調査は、さらに、個別の目的、方法、結果、考察を含む。ただし、この構成も必要に応じて変えてよい。
研究全体の目的を、序論で述べた研究史などと関連づけて記述する。本論が複数の実験・調査から構成されている場合には、各実験・調査を簡単に関係づけて全体の構成を説明しておくとよい。
複数の実験、調査に共通する事柄について記述する。例えば、どの実験でも同じ装置を用いたのであれば、装置についてはここで記述しておく。
各実験、調査から得られた事柄をまとめ、全体として考察する。その研究から得られた知見によって、他のどのような事柄が予測あるいは説明されるかなども、あれば記述しておくとよい。また、その実験・調査に、問題点、限界があればここで指摘する。どのような問題が解決されずに残ったか、今後の課題は何か、など。
その研究から何が言えたのかをまとめる。結論は序論と対応がつくようにすること(内容が前後で矛盾したりしないよう)。序論で答えるべき問題を設定したのなら、結論において何らかの答がなくてはならない。
研究全体の内容を簡潔にまとめる。
論文を書くにあたって引用した書物や論文の書誌事項を記述する。本文中でふれた文献は必ずここに記載しておくこと。
本文中での引用の仕方、文献表の記載の仕方は「心理学研究」誌に準ずる。資料室の「心理学研究」を参照すること。不明な点については「心理学研究」の執筆規定(「執筆・投稿の手びき」のこと)を参照するように(全員購入しているはず、まだ購入していない者はすぐに柳まで購入しに来るように)。
参考文献欄には、本文中で引用はしなかったが、研究を進める上で参考になったという文献の内の重要なものを、引用文献とは別に一覧表にする。これがあると後輩の役に立つ。(基本的には、内容が適切かつ重要ならば本文中で引用するはずなので、「参考」という中途半端な扱いを受ける文献はないはずなのだが…)
本文中の特殊用語の説明など。1ページに2つ以上の注が必要な場合は、通し番号をつけるなどして、本文中の該当箇所と注との対応をつけておく。
研究を実施するにあたってお世話になった人達にお礼を述べたい場合には、ここに記す。そういう人がいなければ、この項目は不要。
整理されたローデータ、プログラムのリスト、調査用紙の実例などを載せる。さらに、データやプログラムはフロッピーディスクのファイルとしても提出することが望ましい。(ローデータやプログラムリストなど、印刷すると大量になるものはファイルのみで十分である。この手の情報は、紙に印刷した状態では再活用もしづらいので、印刷物を必要とする人はいないだろう。)
何をどのように付録とするか、論文に含めるか、論文とは別にした方がよいのか、などは、指導教官と相談して決めること。
なお、可能であれば論文の本文及び図・表のファイルもフロッピーディスクやMOディスクに入れて提出してもらえるとありがたい。付録として論文本体に添付せずとも、柳まで申し出てくれれば卒論ファイル保存用のMOを用意するので、そこにコピーしてもらえれば十分である。
図表に関する注意事項は「手びき」の通りである。図や表は、あくまでも言葉での記述を助けるものなので、言葉での記述抜きの図表を載せてはならない。その図表が何を示しているのか、図表と本文の対応をきちんとつけて説明すること。
何を言葉だけで記述し、何を図で示し、何を表にするかをよく考えること。代表的な特徴は、次の通り。
図:刺激、装置、研究結果などを直感的に理解してもらい、印象づけるのに便利。
図解:刺激、装置のイラスト
グラフ:
折れ線グラフ:変数間の関係の全体的傾向を示す時に便利。
棒グラフ:個々の項目の大きさを比較する時に便利。横軸が名義尺度の場合など。
円グラフ:全体のうちの各項目の大きさを比較する時に便利。
表:正確な数値を示したり、複雑な情報を簡潔に示す(分類・比較・列挙)のに向いている。
図表の実例などについては、初級実験などで配布した資料を参照のこと。
中級論文、卒業論文、修士論文などでは、科学研究のレポートを書くのだということを常に頭に入れておくこと。すなわち、どのような研究を行って、どのような成果を得たかを他者に報告するのであって、小説、エッセイ、感想文の類を書くのではない。このためには、論文を書く前に以下のような問いに対する答を自分なりに整理しておくとよい。これらの問いに答えられないまま論文を書いても、読み手には理解してもらえないはず。