心理学は人間の心の働きについての学問といわれるが、それは外界の認識過程から社会的行動の特性、 人格の発達と変容といったものまで非常に広範なテーマを科学的、実証的な方法で研究していく学問で ある。 アメリカなどでは100名以上の心理学者を抱える大学も珍しくないが、日本の大学における心理学 研究室はどこも規模が小さく、当心理学講座も例外ではない。しかし、心理学の全ての領域の内容を理 解し研究するために必要な基礎的な知識や研究方法をしっかりと習得できるように、工夫を凝らしたカ リキュラムが提供されている。また、当講座では、単に既存の知識を習得するだけではなく、厳密な心 理学的研究法を身につけ、実験や調査を行って自ら新しい知識を生み出すことのできる人材の育成に力 点がおかれている。 したがって、教育面では実験実習や演習が重視される。2年次の初級実験に始まって、3年次の中級実 験では自ら選んだテーマで独自の実験や調査を行い、本格的な報告書にまとめる。中級実験と卒業論文 作成のピークである秋から冬にかけては心理学研究室が一段と活気を帯びてくる。多くの研究協力者が 次々と出入りし、どの実験室にも「実験中」の札がかかり、数多くのコンピュータがフル稼働する。卒 業研究の成果は教員との共同研究として学会に報告されたり、学会誌に掲載されたりすることもある。 当講座は千葉大学の発足時から続く伝統ある講座である。卒業生も六百名を超えるに至り、社会の各 方面で活躍中である。心理学関連の仕事に従事している者が多く、大学、公共機関、企業の研究所など で研究を続けている先輩も多い。しかし、心理学を学んだ学生が心理学とは一見無関係な職場に受け入 れられ、いきいきと優れた仕事をしているのを見るのもうれしいことである。彼らの活躍のおかげでも あろうか、当講座ではこれまであまり就職難に苦しんだ経験はない。また、勉学を続けたい諸君は、千 葉大学の人文社会科学研究科(博士前期課程)や融合科学研究科(博士後期課程)に進学できる。 なお、学生諸君のなかには臨床心理学など、精神医学に近い領域を勉強したくて心理学を選んだとい う人も多いが、その道の専門家になるためには現場での臨床経験が必要であり、当講座でそのような機 会を提供することはできない。しかし、将来そのような方向に進むためにも当講座における基礎教育は 十分に役立ち、先輩諸君のなかには心理臨床や言語治療の現場で活躍している人も多い。 当講座は伝統的に家族的で和気あいあいとし、かつ活発な研究室であった。学生諸君ともども、この 伝統を堅持していきたいというのがスタッフー同の願いである。