傾いた線分による運動錯覚(Illusory motion introduced
by tilted lines)
図を構成する刺激エレメント(/)に対しては,運動の処理系は,垂直方向の運動方向の処理過程だけではなく水平方向の運動の処理過程をも駆動してしまう.中央の十字を注視しながら視点をゆっくり近づけたり遠ざけたりすると,エレメントの網膜上の移動(注視点を中心とした拡大・収縮運動)がその移動と直行する方向の運動処理系をも駆動させる.そのため,それぞれの円が逆方向に回転運動するように知覚される.また,中央の十字を注視しながら刺激自体をゆっくり回転させるとそれぞれの円が縮小・拡大するように知覚される.方向性を持たない刺激を重ねて提示した場合,それらも傾斜した線分と同じ方向に動いて見える.
この錯視の成立のためには,エレメントは整然と円周上に並ぶ必要はない(例1,例2).手描きでも作成できる.
参考:
Ichikawa, M., Masakura, Y., & Munechika,
K. (2006). Dependency of illusory motion on directional consistency in
oblique components, Perception,35, 933-946.
Pinna, B., & Brelstaff, G. J. (2000). A new
visual illusion of relative motion, Vision Research, 40,
2091-2096.