ディスプレー上に等速で左から右に移動する光点を提示する(図上段左側).光点がディスプレーの中央あたりに達した時,光点の真下で別の光点を一瞬点灯(フラッシュ)させる(図上段右側).この時,移動する光点が点灯した光点よりも右にずれて見える(図下段).
人間の視覚系においては,網膜に刺激が与えられてから知覚が成立するまでに約100
msecの遅れがある.この現象を発見したNijhawan (1994)は,運動している刺激の処理においてはこの遅れを相殺するようなつじつま合わせが行われるために,移動する光点と運動を伴わない光点との間の位置のズレが知覚されると考えた.その後の研究により,他の説明も数多く提案されている.
この錯覚がサッカーのオフサイド判定の誤審を引き起こしていることも指摘されている(Baldo
et al., 2002).