視覚刺激に関して,特定の配置条件のもとでは刺激の大きさや角度が実際と違って見えたり,本当は直線上にある複数の刺激どうしがずれて見える現象が知られています.また,実際には存在しないような運動が見えたりします.知覚されている内容に「物理的実在」との不一致があることを考えると,確かに知覚が混乱してみだれているように思われます.
でも,我々人間は,環境をそのようにしか体験できないのです.物理的実在そのものを体験することなどできません.しかも,多くの錯視現象はそれなりに再現性のあるものです.特定の条件を備えた画像などを見ると,必ずといって良いほど錯視現象が生じます.さらに,その錯視体験は多くの人と共有することができます.
こうしたことを考えると,「錯覚」の語で名指しされる様々は知覚現象は,「混乱してみだれた知覚」によるものではなく,むしろ我々人間の体験の本質的特徴を反映するものだと言えます.
このサイトでは,いくつかの視覚的錯覚(visual
illusion)を紹介します.人間の知覚の本質的特徴を「体験的」に理解して欲しいと思います.
ところで,ちなみに,illusionという英単語の語源はill(欠点のある)+vision(視覚)の組合わせにあるのではありません("ill vision"は「錯視」という語の直訳としては良さそうですが).その語源はラテン語のilludere 「からかう」にあります.
illusionが人間の体験の本質的特徴だとしたら,からかっているのは,そしてからかわれているのは,いったい誰なのでしょう?
運動錯視(Motion illusion)
・傾いた線分による錯視 (Illusory motion induced by tilted lines)
・周辺ドリフト錯視
(Peripheral drift illusion)
明るさの錯視(Brightness illusion)
・ ゆがんだモンドリアン図形
(Corrugated Mondrian)
時間に関する錯視(Illusions related to visual time)
・フットステップ錯視 (Footstep illusion)
・フラッシュラグ効果 (Illusory flash-lag-effect)
・音によるフラッシュ錯視(Sound-induced flash illusion)
・色彩変化と運動方向変化の知覚的非同期
(Illusory asynchrony in changes in color and motion dimensions)
見落とし現象(Blindness)
・運動により誘発される見落とし
(Motion Induced Blindness)